その言葉の内容に、そしてあたしの名前を呼んでくれたことに、
少しだけ緊張していた体の力が抜ける。
ゆっくりとあたしに視線を移した沙紀に、小さく笑顔が零れた。
良かった、沙紀はまだあたしのことを見てくれてる。って。
「鈴・・・って・・・」
呆然、という言葉が正しいような驚いた声音で繰り返し、
杏華様も沙紀の視線を追って振り返る。
そしてまた、あたしと視線があった。
その視線はあたしを見つめているようでどこかうつろな目で、
でもしっかりと睨まれた。
「あなたのこと?」
小さな声で問いかけられる。
あたしは一瞬動揺したけれど、負けないようにはっきり「はい」と力強く答えた。
その返事に彼女は少しだけ肩をふるわせると、
「・・・そう」
と瞳を閉じて呟いた。
そして次に開いた彼女の目はもう焦点のあわない目ではなく、
しっかりとあたしを見据えた瞳だった。
その奥に、敵意という炎を携えて。

