「沙紀!」
今度ははっきりと名前を呼ぶと、
杏華様は机の間をぬって走るようにこっちに向かってきた。
もちろんあたしの横なんて素通りだけど。
(その瞬間、すごくいいにおいが、した)
彼女を追うように視線を動かすと、彼女と沙紀は向かい合っていた。
「久しぶりね、沙紀!」
杏華様の声は、とても嬉しそうだった。
沙紀は、いつも見るSPの沙紀の穏やかな笑みをその顔に浮かべている。
なんて答えるんだろう、とドキドキしながら見守った。
「お久しぶりですね、杏華様」
沙紀の第一声はそうだった。
でも、沙紀ははっきり“久しぶり”と言った。
分かってはいたけど、二人は知り合いであるらしい・・・嫌な予感がめぐって胸がざわざわした。
自分の呼吸音が震えているのがわかる。
そして、
「沙紀、私あなたを迎えに日本に来たのよ」
と、杏華様は言った。

