我に返ったのは、彼女と目があって首を傾げられたとき。
しまった!と思ってあたしは背筋を伸ばして頭を下げてみる。
けど、一歩遅かった。
「一番後ろのあなた、見かけない顔ね?」
───間違いなく、あたしのことだ。
ゆっくり顔を上げてみると、やっぱり彼女と目が合ってしまう。
「5月に転入してきました、真城鈴と言います・・・」
名乗りなさい、と視線だけで命令された気分だ。
ただその威圧感と言ったら穏やかな表情とは裏腹にものすごく強いもので、
あたしは素直に名乗ってしまう。
「そう」と彼女は頷いた。
「私は綾小路杏華よ。よろしくね、鈴さん」
「はぁ」と返事はしたものの、
ぶっちゃけよろしくしたくない、と内心思ってしまった。
だって、それなりに長くこの生活を経験してきているけれど、
本当に彼女の存在感は群を抜いている。
一朝一夕で身につくものではないそれに、
あたしが感じる感情と言ったら“恐怖”という言葉が一番近いかもしれない。

