「はい」
「・・・はい?」
マナがあたしの前に現れたのは、とある日の昼休み。
午後の授業の教科書を用意しているときだった。
彼女は相変わらず偉そうにあたしの前に立つと、なにやらグーを差し出す。
拳とマナの顔を見比べても「ん!」と言ってさらにその手を突きつけられるだけ。
「・・・?」
「違うわよ!手を広げなさい!!」
わけもわからずにその拳に拳を会わせると、マナはそう怒鳴った。
あー、何か渡したいのか。
やっと気付いて、両手をお椀型にしてマナの拳の下に差し出す。
そして手元にコロンと転がったのは、
「あ・・・」
「勘違いするんじゃないわよ!庶民の割に頑張ったって思っただけよ!」
すっかり忘れていた、このクラスのランク制度を表すバッヂだった。
意識してなかったけど、あたしそういえば最低ランクだったんだっけ。
手元でキラキラ光る「Ⅱ」を形取ったスワロフスキーを指先で弄ぶ。

