だって、期待したくなかったんだもん。
そう小さく呟いて、あたしは口を尖らせる。
その言葉を聞いた沙紀は一瞬だけ目を瞬かせると、ニヤリと妖しい笑みを浮かべた。
う、嫌な予感。
「へぇ、俺に期待してたんだ?」
「っ」
しまった、と気付いたときにはもう遅い。
あたしは墓穴を掘ったんだ。
けれど目の前には完全に俺様スイッチオンの沙紀の目があたしを捕まえていて、
ただ顔に熱が集まるばかり。
「なぁ?」なんて綺麗な指先で頬を撫でられて、
触れたところがジンジンとしびれていくような感覚がした。
「何を期待されていたんですか?鈴様」
こんな時だけSPモードになるのずるいでしょー!
あたしは口の中がカラカラで、
心臓だって壊れそうなくらいうるさくて、
逃げたいのに逃げられなくて、
頭の中はパニックなのに。
余裕そうにあたしに迫る沙紀に、頭がくらくらした。
「わ、分かってるくせに・・・っ!」
「ダメ。言って」
「~~~っ!!!」
このタイミングで、この人可愛いとか思ってしまう自分の頭を叩き割ってやりたい。

