「・・・嫌、じゃ、なかったよ・・・？」
「───鈴様、今自分が何をされそうになったかお分かりですか？」
ふぅっと息をつきながら沙紀が言う。
その口調には少しだけ呆れと諦めが混ざっていて、
そんなにも子どもに思ってるのかと感じたあたしは「分かってるよ」と口を尖らせた。
「分かってるから・・・うん、ちゃんと分かってるから、沙紀の気持ちを聞きたいんだよ」
沙紀はいっつも思わせぶりなんだから。
甘い言葉を言ってみたり、ちょっと強引に迫ってみたり。
さっきまで恋しくてセンチメンタルになってたあたしの心を
簡単にかき乱しちゃってるの、分かってるのかな？
あたしは、俺様の沙紀に振り回されてばっかりだ。
いい加減はっきりして欲しかった。
「───伝わっていませんでした？」
顔を上げてから少しだけあたしを見つめた沙紀は、困った様子で苦笑した。
伝わってなかった、って何が？
そういう意味で、あたしは首を傾げる。
すると、沙紀は「しょうがないですね」と言ってあたしの腕を掴み、ひっぱる。
いつの間にか崩された沙紀の足の間に、あたしは一瞬で引き込まれた。
