Sの法則-平凡姫と俺様SP-




「・・・そんなに、嫌ですか?」



嫌、じゃない。

沙紀のことは大好きだから、嫌じゃないんだけど。

ただ、

沙紀がどう思ってこんなことをするのか、

どうして突然こんなことをするのか、

全然分からないだけなの。

大好きだから、沙紀とはちゃんと両想いになってからこういうことをしたいの。

そう考えてるのに、あたしはうまく言葉が出てこなくて黙り込んでしまった。



「───すみませんでした」



あたしの両手が不意に解放され、視界が明るくなる。

足下が軽くなって、沙紀が離れたのが分かった。

口調が、“SP”の沙紀に戻っている。



「・・・沙紀・・・?」

「すみません」



あたしが名前を呼んでも、沙紀は謝ることしかしない。

俯いて、ベッドに正座して、膝の上でぎゅっと握り拳を作ってる。

「あの・・・」とおそるおそる近付いて、

あたしは沙紀の手に自分の手を重ねた。