「ふーん?」と沙紀が言うから、
「ちゃんと話聞いてよ!」と言おうとしたのに、
その言葉は摘み取られた。
「・・・っ」
だって、バフッという軽い音と同時にあたしの視界は反転したんだから。
背中全体に当たる柔らかい感触。
それでいて、目の前には端正な沙紀の顔が視界いっぱいに広がってる。
両側には沙紀の手がある。
・・・押し倒されてる、と気付くには少しだけ時間を要した。
「じゃぁ、“オトナ”扱いしてやるよ」
ちょ、ちょ、ちょ、ちょっと!!?
そういうことじゃないんだけど!
だんだん近付いてくる沙紀にびっくりして、あたしは思わず両手で沙紀の口を塞いだ。
「待って、沙紀っ・・・」
沙紀はあたしをじっと見ていたけれど、すぐにそのあたしの手を片手で軽々掴んでベッドに縫い付けた。
両手対片手なのに全然敵わなくて、ばたばた動かそうとするあたしの抵抗なんていとも簡単に無効化されて指先が宙をかくだけ。
「うるさい」
沙紀はそう言って、呼吸の1つで本当にキスが出来てしまいそうなほど顔を近づけた。

