そんな沙紀の声があたしの想像よりずっと近くで聞こえた。
低くて、甘美な声。
聞いたことの無いような色っぽい沙紀の声に、
あたしの背がぞくりとすると同時に、抱えていた枕が取り上げられた。
「・・・沙、紀・・・?」
目の前に現れた沙紀は、妖しげな光をその目に宿しながら真っ直ぐにあたしを見つめている。
逃れられない、強い瞳。
ギシッとベッドが揺れて、沙紀があたしに近付いた。
「・・・俺のこと呼んでたくせに」
「っ」
沙紀の綺麗な手が顔に近付いて、あたしの頬を撫でる。
その感触にすらぞくぞくしてしまって、あたしはぎゅっと目を瞑った。
沙紀が、くっと笑った声が耳に届く。
「本当に、どうしてお前そんな可愛くなっちゃったわけ?」
「べ、別に・・・っ、可愛くなんてないし!」
「へぇ?」
「そ、そうやってあたしのこと、子ども扱いしないでよ・・・っ」
必死に目を開けて、熱い顔を我慢しながら沙紀を出来るだけ睨み付ける。
恥ずかしさと緊張で、また涙が出てきそうだった。
でも、子ども扱いされたくないのは本当だったから、しっかり言葉にする。

