「鈴様?」
ドアがノックされ、聞こえた沙紀の声にあたしは慌てて瞳をぬぐった。
「何?」と返しながら体を起こすと、
ドアが開いてさっきまで脳裏に浮かんでいた人が顔を出す。
「すみません、お休み中でしたか?」
「大丈夫。ごろごろしてただけ」
「そうですか」
沙紀はそう言って部屋に入り、ドアを閉めながら微笑んだ。
「・・・それで、何?」
その顔が直視出来ず、あたしは近くにあった枕を膝に抱え込み顔を埋める。
「鈴様に呼ばれたような気がいたしまして」と沙紀。
・・・そういえば、小さく声に出してみたけど。
でも、あんな小さな声が聞こえるわけないし、呼んだのはずっと前だ。
そう結論に至ったあたしは、「呼んでない」と首を横に振った。
「・・・」
沙紀が動いたのが、空気で分かる。
あたしはさらに強く枕に顔を埋めた。
「───・・・嘘だろ?」

