「今日ね、展覧会に行くんだ」
今日の放課後の時間をフルに使って描きあげている抽象的な絵を、自己満足で見つめる。
気分は芸術家だ。
由美はきょとんとした様子で、膝に頬杖を付いてあたしの顔を覗き込む。
「展覧会って・・・前に鈴がコンクール出したやつ?」
うん、と頷いてまた線を一本。殴るように勢いよく筆をぶつける。
さっきの線と交わりそうで交わらない、そんな線。
(なかなかいいセンスしてるんじゃないの?あたし!)
「もしかして、入賞したわけ?」
「まさか!」
「だよね」
「うわ、超失礼」
そんな遠慮ないところが大好きなんだけど、と内心こっそり付け加えてみる。
別にあたし自身分かってたことだし、凹んだりなんてしてない。
でも拗ねたフリをして口を尖らせながら由美を見ると、
「人と話してるときに絵描くような人よりマシ」と嫌味を言われた。
───・・・間違ってないから悔しい。

