「おかげさまで、こうしてピンピンしてます」
と、あたしが言うと、神谷先生は「なによりです」とやっぱり優しく笑った。
それから、「それで?」と言葉をつなげる。
「この家に来てから、鈴さんが私を訪ねてきてくれるのは初めてのことですね。
どうかしましたか?」
口調はやんわりとしているのに、あたしの言いたいことには気付いているような雰囲気。
なんとなく口の中が乾ききっている気がして、つばを飲み込む。
それから手汗を拭くように部屋着の裾をぎゅっと掴んで、あたしは切り出した。
「沙紀・・・長瀬、沙紀のことです」
あたしのことは予想していたものだったに違いない。
神谷先生は表情1つ変えずに、「あぁ」と頷いた。
「龍世君に、沙紀は査問会に掛かっていると・・・聞きました」
そんなあたしの言葉を、「そうだね」と神谷先生は頷いた。
またぎゅっと拳を握り直し、あたしは正面から神谷先生をしっかりと見つめ、再び口を開く。
「単刀直入に、申し上げます」
「・・・」
「沙紀を、あたしの元に戻してください」

