気付いたら、「え?」と思うより早くあたしの身体が温かくなる。

硬い何かに包まれて、強い力を全身で感じる。

抱きしめられてる、って気付いた。



「・・・沙、希・・・?」

「・・・一生、   ・・・   な」

「え?」



聞き間違い、かと思った。



「一生、俺から離れんな」



聞き間違いじゃない、というようにもう一度沙紀がはっきりと言う。

そしてあたしを抱きしめていた力に、さらにぎゅうっと力がこもった。

一生、なんて。

どうしてそうやって、この人はあたしに期待を持たせることばかり言うんだろう。

その言葉に恋心なんてない、期待しちゃいけない。

頭の片隅ではそうわかっていたのに、

今はただこのぬくもりに心から寄り添いたくて、あたしはゆっくりと目を閉じた。



その安心感で、記憶はゆっくりフェードアウト。





【あなたに並べるくらい、揺るがない強さが欲しい】





(ふわり、ふわり、夢の中で体が揺れる)
(まだ手を伸ばしても沙紀には届かないけれど)
(夢の中の沙紀は、振り返ってあたしの手を握ってくれた)