「おい、おい!!誰かいないのか!!?」
犯人は、叫びだした。
そうだ、そういえばマナを誘拐したときもあたしを誘拐したときも、仲間がいたじゃないか。
すっかり失念していた。
どうしよう、さすがに大勢になったら一人剣道で戦うのは無理があるぞ。
しかも拳銃相手なんて、無理にもほどがある。
マナを助ける、って誓ったのに。
───ここまでか。
あたしの心の芯がぐらつきかけた瞬間だった。
「誰もいませんよ」
あまりに耳に馴染んだ、すべてを静寂に導くような落ち着いた低い声。
その声にあたしははっと顔を上げた。
倉庫の入り口に立っているシルエット、逆光だけど、誰だかしっかり分かる。
「沙紀っ・・・」
あたしの呼んだ声なんて聞こえないかのように、沙紀は一歩犯人に近付いた。
光の力が消え、沙紀の顔が見える。
・・・見たことも無いような、鋭い瞳。
ぞくり、と背筋が凍った。
視線の矛先はあたしでないはずなのに、それでも彼の瞳は恐怖を覚えるほどだった。
───沙紀が、怒っていた。

