余計なことしくさってからにぃぃぃ!!とそのスパイとやらに怒鳴りたいけれど、さすがにそこまでの体力は今のところない。
あらゆる意味で声が出ないでいるあたしの代わりに、お兄ちゃんが少しだけ震える声で口を開いた。
「───すぐ、取り出してください」
「お兄ちゃん・・・」
「そんな危険なもんが妹の体に入ってるって分かってて黙ってられっかよ」
吐き捨てるようにそう言ったお兄ちゃんはあたしを見たけど、すぐに苦しそうに顔を歪めて逸らしてしまった。
目があったのはほんのわずかな瞬間だったけど、その瞳の奥が不安と心配に揺れていたのには気付いていた。
自惚れかもしれないけど、あたしを心配してくれてることが向けられた背中からも伝わってくる。
「そうしたいのは、やまやまなのですが・・・」
神谷先生も悔しそうな顔をして、言葉を濁した。
その様子に、悪いことを言われるってすぐに思い当たってしまう。
「はっきり言いますが、取り出すのは至難の技です」
案の定、神谷先生から言われた言葉はお兄ちゃんの言葉を否定するものだった。
「どうして・・・っ!!」とお母さんが青い顔をして両手で自分の口を塞ぐ。
神谷先生は俯いてから、わずかに首を左右に振って「私も誠に残念なのですが」と前置きをして話し出した。

