「待ちなさいよ!!!」
あたしは、沙紀みたいに強くなれないけど。
でも、今勇気が湧いた。覚悟が出来た。
大切な友人を、この手で守りたい。
「・・・何のマネですか?」
自由になっているあたしに、彼は動揺なんてしないでそう言った。
マネなんかじゃない。
あたしは、近くにあった鉄の棒を構えているだけ。
「あたしの友達、返して」
───大丈夫、大丈夫。
必死に自分に言い聞かせる。
剣道を離れて2年のブランクがあるけど。手に持ってるのは竹刀じゃないけど。
構えるだけで、体が覚えているのが分かる。
「・・・返しなさい」
ゆっくりと犯人ににじり寄る。
本当は剣道は心身の鍛練であって、こうして人を傷つけるために使っていいものじゃない。
それでも、大切な物を守るなら、あたしはこうして戦う道を選ぶ。

