Sの法則-平凡姫と俺様SP-




「そうやって黙ってればいいんですよ」



犯人はあたしに向かって冷酷にそう吐き捨てる。

それからマナの方に近寄ると、「行きましょうか」とマナのロープをほどき、

無理矢理立ち上がらせた。



「っ、嫌っ・・・」

「うるさい!!」



バチン!!



抵抗を見せたマナの頬を、犯人は容赦なく叩く。

広いこの空間の中に、その音はとても良く響いた。

マナの頬は一瞬で赤く腫れ上がり、彼女の目からみるみるうちに涙が伝う。



「いいですか、ご依頼人は僕よりずっと短気です。

機嫌を損ねないようにしてくださいね」



悪魔のような笑顔。

彼はその仮面を称え、再度「行きましょう」とマナの手を引いた。

マナがあたしを振り返る。

目が「助けて」と痛いくらいにあたしに訴えかけていた。



───鈴!!助けて、鈴っ!!



そう叫んでいた、校門でのマナとまったく同じ顔。

あぁ、あたしはまた、何も出来ないままマナを見送ってしまうの?

マナを助けられないの?