「だからなんな「人身売買」・・・え?」
あたしの言葉を遮って、マナは言った。
強い口調と鋭い瞳のまま、彼女はあたしを正面から見つめる。
「身代金誘拐と同じくらい高値で取引されているのよ、人身売買は」
特にあたし達みたいな“家柄”が付くとプレミア物だわ。
とマナはまるで他人事のように言う。
「買い手がついたら売られるのなんてあっという間だわ。
わたくしたちが助けられるのと、どっちが早いのかしらね」
マナの言葉に、あたしはようやく「間に合うのかしら」という言葉の意味を理解した。
ただ、それよりも、人身売買なんて知らない世界の方への理解があまりに遅れている。
追いつかない頭を必死に振り絞って、あたしはマナに問いかけた。
「でもさ、偶然港ってだけで、身代金誘拐かもしれないよ?
あたしはともかく、マナなら身代金の方がいくらでも宇佐美家を脅し取れるんじゃないの?」
人身売買の相場なんてあたしまったく分からないけど、
どうせ金持ちを誘拐したんなら家を脅した方が財源は確実で豊富な気がする。

