そうだ、あたし町中であの犯人に会って、おなか殴られて、意識飛ばしたんだっけ。

(言われるまで思い出せないほど、あたしのおなかは全然痛くなかったりするんだけどね!)



「あなた、沙紀さんはどうしたの?」

「・・・ケンカした」

「なんで絶体絶命のピンチの時にさえ、あなたのノロケ話に付き合わなきゃいけないのかしら」

「なんでそうなるの!」



あたしに言わせてもらえれば、

なんで絶体絶命のピンチの時にさえ、沙紀の話を色恋沙汰につなげられなきゃならないんだ。

少しだけ声が大きくなってしまい、マナは必死に「しーっ!」と言ってあたりを伺う。

あたしも少し慌てて口をすぼめた。

一瞬の沈黙・・・でも、物音1つしない。

どうやら犯人には気付かれてないようだ。

ふーっとあたしとマナは同時にため息をついた。



「でもマナ、大丈夫だよ。ケンカ間際に、沙紀が宇佐美家と神谷家でなんとかするって言ってたし」



そう言ったら、マナは「間に合えばいいけれどね」と意味深なことを言った。

その言葉の真意が分からない。

「間に合うってどういうこと?」と聞けば、「ここがどこか当ててごらんなさいよ」と言った。