うーん、誘拐の行き先って、まぁマンガや小説だと廃校とか工場とかなんだけどなぁ。
まぁそんな都合良くそんな場所があるとも思えないし、あったところでどこかなんて限定できないし。
(そもそもどこにあるかさえ分からない)
(この町に来て数ヶ月、しかも全部車移動なんだから)
おじさんの言葉は当たり前すぎてすんなり納得出来たから、あたしはまた一人考え込んで窓の外を見つめた。
「おじさん、次の信号くらいで降ろしてください」
行く当てもなく乗っててもしょうが無いか。
そう思い当たったあたしは、おじさんに頼んで車を止めてもらう。
言われた料金は、カードで精算した。(念のためカード持たせられてて良かった!)
「お嬢ちゃん、気をつけてね」
乗り込んだときの異様な雰囲気のせいだろうか。
それとも誘拐犯なんて単語を口にしたせいだろうか。
おじさんはそんな意味深なことを言うと、後部座席の忘れ物がないかを確認してからドアを閉じ去って行った。
・・・さて。
「どうしよっかなー」
あたしはまた、同じ呟きをしてぼんやり空を見上げるしかなかった。

