想像もしていなかった内容に、またもや理解が遅れた。
いや、正確にいえばまだ理解しきってないから遅れたもなにもないんだけど。
脳内の整理が追いつかないまま、むしろ言葉を理解しているかも怪しいまま、開いた口がふさがらないあたしに神谷先生はさらに言葉を続けた。
「当家の家宝、それはわずか1センチにも満たない小さな球状の鉱石で、
見る角度によって色を変えるその美しさから、愛と美を司る女神の名をとって“アフロディーテ”という通称で呼ばれています」
まるで教科書を読み上げるかのように、神谷先生はさらさらと言葉を紡ぐ。
ただでさえバカなのに、(一応は)病み上がりの状態で、あたしの頭はパンクしそう。
そんなあたしに気付かず、先生の話は続く。
「アフロディーテは世界中でも当家しか所持していない非常に希少価値のある宝石です。
それ故に世界中から所有権を狙われ、裏ルートでは偽物が取引されるほどでした。
先祖代々、持ち出しを禁じられていたものです」
ゆっくりと意味を呑み込んでいったあたしの脳は、『ちょ、ちょっと待って?』と言った。
そ、それって色んな意味でヤバイんじゃ・・・?
理解と同時に顔を引きつらせたあたしに、神谷先生はにっこりと嫌味なくらい綺麗に微笑んだ。

