胸に付けていた校章を力一杯外し、沙紀に向かって投げつける。
そして沙紀から逃げるように校門に向かって走った。
校門を出てタイミング良くすぐ見えたタクシーを手で引き留め、あたしはすぐさま乗り込む。
「鈴様!おやめください、鈴様!」
オートメーションのはずのドアを無理矢理手でしめて、鍵を掛ける。
窓ガラス越しに沙紀がすごい剣幕で走ってくるのが見えて、
あたしは運転手さんに聞かれるより早く叫んだ。
「真っ直ぐ!とりあえず真っ直ぐ!」
「は、はいぃぃぃ!!」
タクシーの運転手さんは、あたしの剣幕に驚いたようにすぐにアクセルを踏んだ。
間一髪たどり着かなかった沙紀が、呆然と校門で立ち尽くすのが見えた。
───あんな必死な沙紀の顔、初めて見た。
「・・・沙紀のバカ」
SPなんて、いらない。・・・この気持ちは恋なんかじゃない。
『恋よ!』と言っていたマナの顔を思い出して、また涙がにじんだ。
「バカ・・・───」

