「鈴様、大丈夫です。
車のナンバーはしっかりと覚えましたし、ここは校内ですから監視カメラもございます。
何より、神谷学園の校章にはGPSが内蔵されているのをお忘れですか?
すぐに神谷家・宇佐美家に連絡し、緊急の検閲と指名手配を整備いたしましょう」
沙紀はそう言って、あたしを宥めるかのように、あたしの両肩に手をついて跪いた。
分かってる、分かってるんだけど。
このバカみたいな大財閥の手に掛かれば、犯人逮捕なんてきっとあっという間。
でも、あたしが耐えきれないのは、一瞬でもマナに辛い思いをさせてしまったこと。
そして、彼女があたしに差し伸べた救いを願う手を、裏切ってしまったこと。
「・・・鈴様・・・」
だから、そんな言葉じゃまったく気が晴れたりなんかしない。
無言で唇をかみしめたまま動けないあたしに、沙紀は困ったように眉を下げた。
そして「あなたをお引き留めして、申し訳ありませんでした」と言葉を続けた。

