「鈴!!鈴!!」
その声は、ドアが閉められたせいで遠くくぐもったものになる。
そして、あたしとマナの必死さむなしく・・・車は、マナを乗せて去って行った。
「あ・・・」
マナが、連れて行かれてしまった。
あたしに、あんなに助けを求めていたのに。
あたしは、こんなに近くにいたのに。
目の前で起きた絶望的な誘拐事件に呆然としてあたしは立ちすくむ。
ただ、カタカタと手の震えが止まらなかった。
「鈴様・・・」
そうよ、元はといえば。
あたしは、八つ当たりのように振り返って声の主を睨み付けた。
「沙紀!!どうして止めたの!!マナが連れて行かれちゃったじゃない!!!」
必死に叫んで沙紀を責める。
ただ、人のせいにしているだけだと分かっていた。
あの状況ではあたし達が絶対的に不利で、沙紀は正しい判断をしたのだと、頭では理解していた。
でも、でも、でも・・・っ!!!
もっと方法があったかもしれない。マナが連れて行かれない方法が。
目を閉じれば、あたしに手を伸ばして必死なマナの姿が、そして悲痛な声が横切ってしまう。

