「沙紀!!?」
あたしは声を上げた。
沙紀は、無表情のまま道を開けるように壁際に退く。
そしてその鋭い瞳であたしを捉えると、「鈴様もこちらへ」と言った。
「ちょっと沙紀!!何言ってるのよ!!」
マナを助けて!!そう叫んだのに、沙紀は表情1つ変えなかった。
助けて!!いいから早く!!どんどん言葉をぶつけても、沙紀は表情どころか微動だにしない。
そうしている間に、マナを連れた男があたしの横をすり抜けていく。
「鈴!!!」
マナが悲痛な声であたしを呼んだ。
「マナ!!」
その声にはじかれるように、あたしもマナの元へ駆け寄る。
否、駆け寄ろうとした。
あたしの腕を、沙紀が掴んだせいで動けなかったからだ。
「沙紀、離して!!マナが、マナが連れて行かれちゃう!!」
「鈴!!助けて、鈴っ!!!いやぁ!!」
悲痛に叫びながら、マナは目の前の黒い車に無理矢理押し込まれていく。
どんなに駆け寄ろうともがいても、沙紀に抵抗しても、あたしは身動き1つ取れない。

