相変わらず執事さんは人の良い笑顔を浮かべたままだけど、一言も口は開かないままだ。
沙紀がすっとあたし達と執事さんの間に入り込んだ。
「・・・」
「・・・」
お互い睨み合ったまま、何も喋らない。
ただぴりぴりした空気だけが、この場を支配した。
今は放課後だし、話し込んでいた分生徒の数も少ない。
あたし達だけが、まるで空間を切り離されたかのように玄関先にいた。
そう、誰もいなかったのに───ううん、誰もいないと思い込んでいたからこそ、
あたしは完全に沙紀達に気を取られていたんだ。
「きゃぁ!!」
「マナ!!」
「動くな!!」
突然、腕の中にいたマナのぬくもりがすごい勢いで引っ張られて無くなった。
マナの悲鳴、あたしがマナを必死に呼ぶ声、そしてマナを引っ張った男の声が同時に響く。
スーツを着た見慣れぬ男性が、マナの首を腕で絞めるように捕らえ、そして彼女のこめかみに拳銃を当てていた。

