Sの法則-平凡姫と俺様SP-




そんな二人にどんどん近付いて、表情が見えるようになる。

マナの顔がなんとなく険しいのに気付いた・・・ここで、あたしにもやっと“嫌な予感”がよぎる。



「マナ!」



人目も気にせずあたしが本名を呼んで駆け寄ると、

マナがこっちに気付いて「鈴!」とあたしに抱きつくように飛びついた。

(マナが初めて名前呼んでくれた!・・・ってそんなこと言ってる場合じゃない)

その雰囲気に、やっぱりただごとじゃないと思ったあたしはマナの腕を掴む。



「マナ、どうしたの?」



執事さんに背を向けるように、彼女を庇って奥に立たせる。

マナはただ妙に警戒した目で、あたしの肩越しに執事さんを睨み付けた。



「あの男・・・わたくしの家の執事じゃありませんわ」

「え、どういうこと!?」

「彼だけではなく、迎えに来た運転手も車も、わたくしは知らないのですから」



マナが乗ろうと、ううん、乗せられそうになっていた車。

たしかに黒塗りだけれど、なんとなく雰囲気が違うのが庶民のあたしにだって分かる。