「?」
ただ、その通りすがりに。
あたしの鼻は、なんだか嗅いだことがあるようなないような、不思議な匂いに気付いた。
たった一瞬だったけれど。
もう一度くんくんするけど、もうその匂いはしない。
───あの、執事さんの匂い・・・?
二人が出て行った教室のドアを見つめて固まっていると、
「鈴様、我々も帰りましょう」
と、あたしの荷物を手にした沙紀が近寄ってきた。
あたしは、すぐさま彼に問いかける。
「ねぇ沙紀!今日、マ・・・メグの執事さんに近付いた!?」
あたしの勢いに圧倒されるように、沙紀は目を瞬かせる。
彼は首を横に振った後、「どうかされたのですか?」とあたしに問いかけた。
「なんか、変な匂いがしたんだよね」
「変、とは?」
「どっかで嗅いだことのある匂いなんだけど・・・」
両手で自分のこめかみをぐりぐりと押して必死に思い出す。
なんとなく、暗闇に浮かぶロウソクが頭に浮かんで、そこではっと思い出した。

