思わず問いかけると、マナは「風邪引いたらしくて、今日は代理の方なの」と言った。
なんだか人の良さそうな優しい顔立ちの人で、その説明を受けてぺこりと会釈をしてくれる。
あたしも、思わず頭を下げた。
(「仮にも仕えられる立場の人間が軽々しく頭を下げないの!」というマナのお咎め付き)
「まだ宇佐美家に勤めて日が浅いので、不慣れな部分も多々あるのですが」
彼はそう言って恥ずかしそうに笑う。
たしかに、言葉づかいやマナの荷物の取り扱い様はなんとなくぎこちない。
誰だって初めはそうなのに優しいなぁと思ってへらっと笑った。
「それじゃ、失礼するわね。何かあったら言うのよ」
「うん、話聞いてくれてありがと!」
なんだかんだ話を聞いてくれるマナは本当に丸くなったなぁ。
そう思いながら、また明日ねーと手を振ったら、マナは「ごきげんよう」と膝を少しだけ曲げた。
別に、その顔に「はしたない」って書いてあるのなんて、もはや慣れっこなんだからね。
そして、新しい執事さんも「では」と言って、マナの後を付いていく。

