「わかった?」

「・・・それで、その願望を持っていたとして、どうなるの」

「あとは簡単じゃない。全ての願望を満たす答え、それが“恋人”ってことよ」



あたしは、マナの言っていた『あたしの願望』とやらを思い出した。

“SPという形でなく”“そばにいて欲しくて”“色んな顔を見せて欲しい”

その答えが・・・“恋人”。なるほど。



「一理あるな」

「あなた、まじめに聞く気あるの?」



あたしの『まじめな』返答は、お気に召さなかったらしい。

マナにはとても嫌そうな顔をされてしまった。

そうは言っても、やっぱりピンと来ないものは来ないのだ。

「長期戦ね」と、マナは苦虫を噛みつぶしたような顔で眉間を押さえた。



「恵実様、そろそろお帰りにならねば。本日はフランス語の先生がいらっしゃる日ですよ」

「あぁ、そうだったわね」



突然新しく入ってきた声に、あたしは自分が呼ばれたわけでもないのに顔を上げた。

そこにいるのは、マナ担当の執事さん・・・ではなくて。



「あれ?今日いつもと違う人なんだ」