「おかえり、鈴ちゃん」と彼はあたしに向かって穏やかに微笑むが、そんな彼に「どういう意味です?」と問いかけたのは沙紀。



「だって、この間の生誕祭で鈴ちゃんが単独行動したのは、君がご婦人達に捕まっていたからだろう?沙紀」

「それは・・・」

「今日だって、きちんとSPとして仕事をこなせていたのなら、彼女が野々宮さんの家に行くのは容易に気づけたはずだけどな」



仕事が出来てないのは君の方だよ、そう言って龍世君は沙紀を鋭い目で見つめた。



「───申し訳、ありません」

「それにしても、完璧なSPである君がこんなミスをするなんて珍しいね」



あたしの味方をしてくれていた龍世君が、そう言って沙紀を不思議そうに見る。

「それは・・・」と沙紀が言葉を濁した。

そして横目で一瞬あたしを見て、「なんでもありません」と言う。



「体調が悪かったら、言うんだよ?」

「お心遣い、感謝いたします」

「あまりに続くようだったら、鈴ちゃんのSPの変更も考えなくちゃいけないからね」

「・・・はい」



その言葉に、なぜか胸が痛んだのはあたしの方だった。

なによ、あたしのこと守るのは、沙紀の仕事じゃん───