「まずお礼を言わせてください」
「はい?」
「父を助けてくださって、ありがとうございました」
助けるって・・・?
一瞬考えて、それからゆっくりとフラッシュバックするように光景が頭に浮かんできた。
そうだ、展覧会に行く途中の信号で、杖を付いたおじいさんがいて。
あまりに遅すぎる歩くスピードに、信号が点滅し始めて、道を曲がったトラックが突っ込んできて───
思わず突っ込んだうえに、全力でおじいさんを突き飛ばした気がする。
「あ、あの!あたしおじいさん突き飛ばしちゃったんですけど!お怪我は・・・」
あたしってば後先考えずなんてことを!
思い出した記憶に血相を変えて慌てて言えば、「かすり傷程度です」と神谷先生は優しく頷いた。
良かった、と安堵して体の力を抜く。
「その貴方の言うおじいさん、それが私の父でした。
貴方は命の恩人です。
・・・だから、お礼として手術代、病院代、全てこちらで負担させていただく形になりました。
と同時に、大掛かりな貴方の手術に失敗があってはならないという父からの命令により、私自ら執刀させていただいたのです」

