なんだか龍世君にも申し訳無くなってくる。
昨日だって、松葉杖ついて帰ったらものすごい勢いで心配してくれたしさ。
それを思い出して、また深く長い息をつく。
「・・・ならば、少し躍ってみますか?」
「え?」
「勝負に勝ったご褒美と言うことで、お付き合いください」
沙紀の言葉に、隣にいる声の主を見上げる。
彼はすっと松葉杖を取り上げて柵にかけると、あたしの手と腰に手を掛けた。
「え、ちょ、ちょっと!?あたし足怪我して・・・っ!」
「大丈夫です、エスコートはうまいですから」
いきますよ、そう言って沙紀はリズムを刻み出す。
龍世君との練習を思い出しながら、あたしも覚悟を決めてステップを踏んだ。
どうせ痛いのに、そう思っていたけれど。
「あれ・・・?」
「どうしました?」
「全然痛くない」
むしろ、誰と躍るよりもスムーズに躍れる気がする。
驚いて沙紀を見上げると、「エスコートはうまいと言ったでしょう?」と余裕たっぷりに微笑まれた。