「だったらまだ龍世君の方が可能性あるっつーの」と、首を横に振りながら答えると、彼女は「まぁ」と両頬を押さえた。
「私の独り言と思ってくださってよろしいのですけれど・・・」
「ん?」
「私は、鈴ちゃんは沙紀様と一緒にいるときが一番伸びやかで嬉しそうな顔をしていると思っていましたわ」
そんなの、そう言いかけて止まった。
それは・・・それは、沙紀がなんだかんだいつもあたしを庶民らしくさせてくれるからであって。
別に、だから一緒にいて普通に気楽なだけで───
恋なんて、そんなの関係ない。
「ごめんなさい、気にしないでくださいね」
そう言って申し訳なさそうに謝るののかちゃんに、「全然大丈夫だよ」と笑い返す。
けど、頭の中には「SPとお嬢様の恋愛は認められてないからね」と言う龍世君の言葉がよぎった。
(なんでそんなこと、今思い出すの)
「鈴ちゃん鈴ちゃん!」
もやっとしたあたしの思考を吹き飛ばすように、今度は真央ちゃんの明るい声が響いた。
一番長く咎められていた彼女も、やっと解放されたらしい。

