Sの法則-平凡姫と俺様SP-




「それじゃ、さっそく女性のステップから教えるね」



そう言って龍世君はあたしの隣に立った。

始まりは右足からだよ、と言って1・2・3・・・と優雅に軽やかにステップを踏む。

この人はなぜ女性のステップまで踏めるのだろう。

そんな素朴な疑問を一人打ち消し、見よう見まねでステップを始めた。



「1・2・3、1・2・・・ん?」

「次はこっちだよ」

「あー、1・2・3、1・2・3、1・2・3・・・」




なんだ、意外と簡単かもしれない。

「うまいうまい」と褒めてくれる龍世君に乗せられ、調子に乗ってステップを踏む。



「なんだ、鈴ちゃん出来るんだね」

「へへー!まぁね!」



感心するように顎に手を当てている沙紀が目に入り、「一個くらい特技なくっちゃ」と調子に乗って言ってみた。



「じゃぁ、僕は男性側に戻るね」

「え」



龍世君はにこりと笑みを深めると、するりとあたしの前に回る。

そして当たり前のようにあたしの手を取ると、もう片手を腰に回された。

ぐいっと引っ張られて密着され、龍世君の顔がものすごく近くに来る。