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案の定というかなんというか。
Aクラスというものはやっぱりどの学年でも注目を浴びるものらしい。
それはもう、ドレスの種類から着こなしから所作振る舞いに至るまで。
ましてや「神谷の名前が掛かった転校生」ということで、あたしの注目はさらに集まるんじゃないか・・・なんていう怖いことまで聞こえてしまった。
どうしてその噂に庶民という言葉が付いていってくれないんだろう、なんてこの時ばかりは“庶民”という言葉に助けを求めた。
『いいこと!?Aクラスのイメージを下げたら許しませんわよ!?』
なんて、最後に怒鳴りにきた宇佐美さんの顔が頭をよぎる。
はぁ、とまた大きくため息をついた。
この家に来てから何度目のため息だろう・・・幸せなんて、逃げ切ってる気がする。
『鈴ちゃんならきっと出来るわよ!』
『今度こそ何かあったらお手伝いさせてね!』
『龍世様と練習なんていいなぁ』
なんて、ののかちゃん・香織ちゃん・真央ちゃんの応援も思い出した。
(ん?真央ちゃんは応援ではないか?)
うん、友達がいるからがんばれるかも。そう言って気合いを入れ直して、肩を回した。

