届いているかは分からないけれど、なんだか犬猿の仲の相手に親切にされると嬉しくなるものだ。



「宇佐美さんね、鈴ちゃんに借りがあると思ってるのよ」



ふふ、と笑ってののかちゃんが小さな声で耳打ちしてくれた。

「借り?」と聞き返すと、「そうよ」と答えてくれたのは真央ちゃん。



「先日の龍世様のパーティーで、宇佐美さんはずいぶん龍世様と親しく出来たみたいだから」



あー、あのとき。

そうは言っても、あれはあたしも宇佐美さんに罪悪感があったっていうものだから、どちらかと言えば貸し借りじゃなくてあれでチャラだと思ってたんだけど・・・。



「素直じゃないなぁ」



そう呟いて、2冊目のノートを開いた。

なんとなく、宇佐美さんの印象が良くなって、笑ってしまった。



「───これは、是が非でも再試は避けなければいけませんね」

「そうだねぇ」



適当に開いたそのページには、「がんばりなさいよ」の文字。

後ろから覗き込んでいた沙紀にも言われ、あたしにやる気がみなぎってきた。

宇佐美さんで気力回復、というのも癪な話だけどね。

(しょうがないから、あとで龍世君に話してイメージアップしといてやるか)