ね、と言って今できる全力の笑顔で笑いかけた。
そして話を逸らすように、もう一度その絵の前にしゃがみ込む。
「にしてもさー、どうしてこの絵下に置いてるの?
せっかく入賞してたんだし、目立つところに飾ればいいのに」
「それは・・・」
「あ、ほら、あそこの絵なんて布掛けちゃってるじゃない。絵がダメになっちゃうよ?」
部屋の中には、なぜか二枚だけ飾られず床に立てかけられている絵。
そのもう一枚に気付いたあたしがそう言うと、龍世君の返事より早く沙紀に「鈴様」と呼ばれた。
「・・・お時間でございます」
何、と問いかけたら沙紀は機械的にそう答えた。
なんだ、もう時間か。
本当に楽しい時間というのはあっという間に過ぎて困る。
「はーい」と気の抜けた返事を沙紀に返してから、あたしは龍世君に向き直った。
「龍世君、ありがとう!本当にいい息抜きになったよ」
「そっか、良かった」
「また見せてね!」
そう言ったら、龍世君は無言で微笑むだけだった。

