「あたしの悩みを吹き飛ばしてくれたの・・・というか、浄化してくれたというか。
あたしの気持ちを前向きに変えてくれて、大げさかもしれないけど“生きよう”って思わせてくれた」
あの絵を見たときの、揺さぶられた心は忘れられない。
綺麗で、本当に綺麗で。
優しさ、強さ、慈しみ、愛、美しさ・・・どんな言葉を使えばいいか分からないほど、その絵からは想いが溢れていた。
誰が描いたのかなんてもう分からないけど、目を閉じればいつだってその絵が鮮明に思い浮かぶ。
「それで、そのとき、あたしも絵を描こうって思い始めたんだよねー。それからはずーっと絵画バカ」
ははは、と笑うと、龍世君は「それで?」と優しく言葉を続けさせてくれた。
「この絵を見たのはインターネットでだったんだけど・・・その“思い出の絵”を見たときと同じ衝撃を受けたの」
「・・・」
「だから、ずっと本物を見てみたかったんだぁ」
見られて良かった。そう付け足してあたしは立ち上がる。
「龍世君だったんだね、描いたの」
「・・・うん」

