Sの法則-平凡姫と俺様SP-




「あ、あたしこれ好きだなー」

「ありがとう」



そんな言葉を交わしながら絵を見ていく。

一枚。また一枚。

龍世君の描く絵の世界観に引き込まれていく。

そして、部屋の角にたどり着き、曲がった瞬間に足先にこつんと何かが当たった。

はっとして顔を下げると、キャンバスが一枚。

絵に夢中になりすぎて、どうやら飾っていない絵にぶつかってしまったようだ。



「あ、ごめん、龍世君。あたし蹴っちゃ・・・っ!!!」



慌ててその絵を汚してないか確認するためにしゃがんで、あたしは息を飲んだ。

龍世君の「気にしないでいいよ」という声も聞こえない。

だって、この絵は・・・



「これ・・・」



あたしの心がまたぎゅっと捕まれる。

インターネット越に見た衝撃が、何倍にもなって襲ってくる。

嬉しいような、苦しいような、ただ息が出来なくなるようなそんな感覚。

考えるより早く、あたしの目からぼろぼろ涙が零れた。