Sの法則-平凡姫と俺様SP-




───そして、あたしは今その“アトリエ”のドアの前にいる。



「そんな緊張しなくても大丈夫だよ?」

「そうは言っても・・・それなりに、緊張するって」



どの部屋のドアも、鮮やかな装飾は施されているけれど、この部屋は格別に豪華だった。

ドアノブまで純金、と聞いてさらに手汗が止まらなくなっている。

スカートで何度も手を拭くあたしを見て、代わりに龍世君が笑いながらドアを開けてくれた。



「う、わぁ・・・っ」



そして広がる展覧会のような絵の世界に、あたしは感嘆の息を漏らす。

美しい情景の水彩画から、鉛筆のデッサン、油絵の人物画まで・・・ありとあらゆる種類の絵がそこには広がっていた。



「すごいすごい!龍世君上手なんだね!」

「そう言ってもらえると嬉しいな」



一枚一枚を目にとめて部屋を壁沿いに歩く。

さすがアメリカに行っていたからだろう、日本にはないような色が混ざっているところがとても素敵だ。

強く見える色がうまく全体の中に馴染んでいて、アクセントになっている。

龍世君のセンスでもあるのかもしれない。