「そうなんだー、あたしも前の高校のとき美術部だったんだよー」
「聞いてるよ」
龍成君は、穏やかに笑って頷き、きんぴらゴボウを口に運んだ。
(金髪の王子様にきんぴらゴボウってなんともミスマッチ)
「そうだ、鈴ちゃん、僕のアトリエに来る?」
「アトリエ?」
「うん、一室だけ、絵を飾ってある部屋があるんだ。勉強の息抜きに、御飯食べ終わったらおいでよ」
そんな心遣いありがたすぎる!
転校してからしばらく絵に触れていなかったあたしは、「いい?」という期待を込めて後ろに立つ沙紀を振り返った。
沙紀は時計を見て、しばらく考え込んだ後、
「8時までですよ」
と言ってくれた。
てっきり、試験後とでも言われるかと思っていたあたしにとっては、時間制限付きでも(たとえそれが30分なくても!)嬉しすぎることだ。
「ありがとう、沙紀!」
さぁ、もりもり食べるぞー!
と意気込んでごはん茶碗を持ち上げたあたしを見て、龍世君も「もりもり食べるぞー!」とマネして笑った。

