「ホントホント!・・・あ、でもさっきの言葉でもう帳消しだか・・・ら・・・・・・」
すべての教科書・ノート・参考書を閉じて、重ね合わせてとんとんと揃える。
そして机の真ん中に置き直しながら振り返って、あたしの声は徐々に摘み取られた。
「・・・沙紀?」
なぜか沙紀はネクタイを緩めながら、あたしに近づいてくる。
思わず後ずさるけど、すぐに机に腰が当たった。
もうお互いのおなかがくっつくような至近距離で、沙紀の手があたしの横の机に着く。
少しでもよけようとして上半身だけでものけぞる体制のあたし。
苦しいポーズのはずなのに、それよりも意識は目の前の妖しげな笑みを称えた沙紀に向かっていた。
「・・・沙、紀・・・?」
ゆっくり、もう一度名前を呼んだ。
沙紀はくっと口角を挙げると、ゆっくりあたしに顔を近づけて顎に手を掛けた。
「んなっ・・・」
え、何、どういうこと、え!?
恋愛経験値なんてほぼゼロに等しいけど、ただ「キスされる」と思ってあたしはぎゅっと目を瞑った。

