───そして、勉強すること数時間。



「ここはこの公式つかって・・・1の式代入して・・・左辺を右辺に動かして・・・因数分解して・・・だから、x=3!!」



どうだ!という意味を込めて沙紀を振り返る。

解説書を開いていた沙紀はあたしの顔をじーっと見た後・・・



「正解です」

「ぃやったぁぁぁぁぁぁ!!」



沙紀からのオッケーサインに、あたしは両手を伸ばして喜んだ。

なぜなら、この問題が終わったら夕食って約束だったんだから!

沙紀は「よく頑張りましたね」とニコニコとしながら解説書を閉じる。

(いや、頑張らせたのはアンタなんだけどね!)



「鈴様は、恐ろしいほど理解力がないだけで、飲み込むと早いのですね」

「褒めてないよね、それ全然褒めてないよね」

「再試にはならなくて済みそうだ、という安堵の言葉でございます」



この人はどうして素直にあたしのことを褒めてくれないのだろうか。

むしろ嫌味が9割くらいを占めている・・・なんて失礼なやつ。