「なんでみんな泣きそうなの?」
素直に感想を言おうとしたけど、妙に喋りにくい。
口を見たら・・・あらびっくり。これ、酸素マスクってヤツじゃないの?
鼻と口を覆うようにつけられたドーム型のプラスチックは、医療に携わらないあたしだって知っている。
それからゆっくり動きにくい首を少しだけ動かしてあたりを見回すと、
心電図、白いベッド、白衣の看護士さん。
自分に延びてる無数のコードと、そして真っ白な空間、枕元には花が生けられている。
「え? もしかして、病院・・・?」
気付いたあたしが喋りにくいながらも消え入りそうな声で問いかけると、「この馬鹿!」とお兄ちゃんに頭を叩かれた。
痛い!!
遠慮ないそのグーに、眼の前がチカチカした。
(お母さんがお兄ちゃんを咎めてる・・・もっと言ってやってよ!)
「鈴、覚えてないの?」
ぎゃぁぎゃぁ言ってる家族達を隠すように視界にアップになったのはあたしの親友。
珍しいくらい眉を寄せて心配そうな由美に顔を覗きこまれて、あたしは動かない首を精一杯傾げてみせた。