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「それでは、まず数学から始めましょうか」



帰宅してまっさきに向かったのは自室の机。

自分の家だったらダイニングテーブルに相当するだろう、大きな勉強机だ。

目の前にはさっきまで授業でも開いていた教科書と、ミミズがのたうち回ったような線がたくさんあるノート・・・あたしの、眠気との戦いの勲章。

小さな字と意味の分からない文字の羅列に、すでにめまいがする。



「今回の範囲は32ページからですね。さっそく、小問から解いていきましょう」

「・・・」



そんなあたしの内心を知るよしも無く、家庭教師のように横に立った男は淡々と言葉を紡ぐ。

渋々シャーペンを手に取り、ノートに「問1」と書いた。

そして問題を見る。



「・・・」

「・・・」

「・・・」

「・・・」



しばしの、沈黙。