「鈴ちゃん!」



そんなことをしていると、掛けられた声に沙紀から視線を移す。

「龍世君!」とその声の主を呼べば、「今日はありがとう」と龍世君は笑った。

その会話の中で、すっと沙紀が身を退ける。



「いえいえ、楽しんでくれたならよかった!」

「卵焼きもすごくおいしいよ」

「良かったー!」



でもなんでだろ。おいしいって言われて嬉しいんだけど、さっきの素直じゃない沙紀の反応の方が気分が高ぶったような・・・。

そう思って、ちらりと沙紀を見た。

そんな一瞬のあたしの反応さえ、龍世君が冷静に見つめていたのなんて気付くわけもない。



「ねぇ、鈴ちゃん」

「なに?」

「・・・鈴ちゃんって、沙紀のこと好きなの?」

「はっ!!?」



こそり、と耳打ちされた言葉。

あたしは思わず大きな声を上げてしまって、すぐに両手で口を塞いだ。

沙紀には聞こえなかったんだろう、不思議そうな顔(それでいて「はしたない」と咎めるような顔)をしてこっちを見ている。

あたしは口を覆ったまま、首をぶんぶんと取れそうなくらい横に振った。

なにをどうしてそんな風に思うのか。