「あなた、龍世様はご存知ね?」
「あぁ」
知ってるけど、という意味で頷く。
正確に言えば、さっきお昼ご飯のときに知ったんだけどね。まぁ、嘘じゃないでしょ。
「龍世様が、本日お戻りになるというのは本当なの?」
「そんな噂があるみたいだねー。でも、知らないや」
ほんの少し頬を赤くした宇佐美さん。
『宇佐美さんが、“龍世様”にご執心』
そんなお昼の噂話が頭をよぎり、あながちそれも間違ってないんじゃないかと思いながら、「悪いね-」と軽い気持ちで答えた。
・・・せっかく、答えたのに。
「まぁ!それが本当に神谷家にいる人の言葉なの!?」
あたしの答えに、宇佐美さんはヒステリックに声を荒げた。
その声で教室がざわついて、視線が集まるのが分かる。
彼女とあたしのいざこざなんてもはや日常茶飯事となりつつあるのに、相変わらず野次馬好きなお嬢様・お坊ちゃま達だ。
いや、それはさておき・・・。
はぁ、と聞こえよがしなため息をついて、あたしは「あのさぁ」と言葉を続ける。
「自分の思い通りにならないことを口実にして、一々神谷神谷って騒ぎ立てないでくれないかなぁ」

