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・・・という思考を一瞬で飛ばす特技を持つのが、
「ちょっと、そこの庶民!」
なんて失礼極まりない声掛けをしてきたこの女である。
反射的に(しょうがないでしょ!)立ち止まってしまったあたしを見て、
彼女はハンッと鼻で笑う。
「あぁら、自覚があったのね」
「・・・何か用?」
嫌いなら話しかけてこなければいいのに、彼女は何かにつけてあたしを引きとめる。
それは入学してからずっとそう。
実際、今も聞き返したあたしに対して「別に?」とその綺麗な髪をかきあげた。
だから、用ないなら話しかけるなっつの。
「あなた、その・・・」
「ん?」
さっさと素通りしようとしたところで、お嬢がもごもごと口を動かした。
なんだ、用があるんじゃないか。
そう思って立ち止まって、その綺麗な顔を見つめた。
(それにしても、この女が口ごもるとは珍しい)
彼女は少し言いにくそうにしていたけれど、小さく咳払いをした後にあたしを見下して口を開く。

