一人納得していると、「そういえば」と遠慮がちにののかちゃんが口を開いた。
「鈴ちゃんって、神谷家の本邸にお住まいになってるんじゃなかった?」
「うん、そうだよ。神谷先生のところでお世話になってるの」
「それでどうして龍世様のことご存知ないの?」
あくまで素朴な疑問なんだろう。
本当にきょとんとしたその表情に遠慮することなく、「だって神谷先生に息子がいるなんて知らなかったし」と答えたら、
鈴ちゃんらしいわ、と三人はクスクスと笑った。
「で、沙希。ホントにその龍世様とやらは今日来るの?」
神谷家のSPならさすがに龍世様のことは知らないはずないだろう。
だったら、スケジュールもきっと知ってるよね?
そう思ってあたしは振り返った・・・けど。
「沙希?」
「あ、すみません!ぼんやりとしてしまいました!」
珍しく沙希がぼーっとしていたものだから改めておそるおそる声を掛けた。
本当に沙希は意識が飛んでいたようで、慌てて背筋を伸ばす。
「珍しいね、どうした?」
「体調でも悪いんですか?」
「すみません、お気になさらないでください。本当に何もないですよ」

